防  風  林

(文・高 橋 幸 男)

第2回 あきらめない
 

 極真空手の試合では、小学生は一般的に男女混合で、簡単なプロテクターをつけ、体重差も関係なく行われる。 
 数年前、北海道大会の小学生の部の試合に、私の教えていた女子児童が出場した。懸命に戦ったが、劣勢のまま試合が進み、終了間際に反則のパンチを受け、口を切り、血を流し負けた。
 一度の反則は注意のみで、判定に影響はない。 屈辱感と挫折で泣きながら試合場を去ってゆく姿は何ともかわいそうだったが、仕方なかった。
 素養も平均以下にみえたし、それまでの二年間、何度も試合に出たが、一度も勝ったことがなかった。 
 それから道場に顔を見せなくなった。 このままやめてほしくないという思いで、毎日来るのを祈るような気持ちで待っていた。
 二、三ヶ月たったある日、お母さんに連れられて道場に来て「また稽古をしたい」と言う。
 私は「一生懸命に稽古すれば必ず上位に入るし、きっと新聞にも掲載されるよ」と励ました。  
 それからその女の子はほとんど休むことなく一般の稽古にも参加し、先輩たちの励ましを受けながら稽古を続け,翌年に全道三位になったのを皮切りに、ほとんど負けなしの戦績を残している。 
 性格も明るくなり、やさしくなった。 努力すれば必ず結果になる指導する自分にも時折、ふと迷うことがあったが大いに刺激になった。
 現代は何もかも速成仕様になっているような気がする。 
 プロセスを大切にし、決してあきらめずにじっと我慢し、少しずつ物事を成し遂げていくことこそ大切だと思う。


(空手家、画家・鹿追)
2011年8月20日北海道新聞十勝版(夕刊)


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