防  風  林

(文・高 橋 幸 男)

第4回 野生を取り戻す

 空手の世界に入ったのとほぼ同時期に、乳牛検定の仕事を始め、30年間酪農家を回った。 酪農は効率よく乳を搾ったり、太らせたりする。良い餌を与え、けが、病気をしないように管理し、過度な運動もさせない。 仕事をしながらいつも家畜と人間が似かよっているとおもったものだ。車や電車で仕事に行き同じルートを通って家に帰り飯を食って寝るからだ。

 報道などによると、道内の子供たちは、全国的にも肥満の割合が高く体力も低いようである。 私たちの子供のころに比べ、今の子供たちの体力の無さには驚かされる。 空手の指導を始めてから、そう実感してきた。 私自身も大会や会議などで東京に出かけることが多いが、地元にいるときより階段を上がり下りし、歩く距離が格段に多くなり、足が筋肉痛になることがある。一方、田舎の人たちはできるだけ楽をするために車を使い、歩きたがらない。

 昔、道内の人々は体力も忍耐力も強かった。厳しい自然環境や労働環境の中で、いやでも心身が鍛えられていった。 米や芋などの作物も、さらに品種改良する為には(野生の)原種との掛け合わせが絶対に必要だと言われる。

 30数年前、極真空手が世界中に空手ブームを巻き起こした。 それまでは寸止めであった空手に、極真空手は直接打撃性という野生の生命を吹き込んだのだと思う。

 人間には知性も大切だが、野生は絶対に必要なのではないか。 青少年に空手の指導を通じ、それを伝えていきたいと思う。


(空手家、画家・鹿追)
2012年2月25日北海道新聞十勝版(夕刊)


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