防  風  林

(文・高 橋 幸 男)

第5回 幼少期のしつけ
 
あるテレビ番組で、公共の場所で子供が騒ぎ他人に迷惑をかけても叱らない親は日本人に多く、子供たちは体力ばかりでなく学力も下がり、「教育日本」の面影はなくなったと伝えていた。
 30年以上、空手道場で生徒たちと関わってきた経験から、子供の学力などと幼少期のしつけとは無関係ではないと思う。
 人に迷惑をかけず、自分にしたことに責任を持つことを教われば、自立心、やる気などが養われ、さまざまな能力が伸びる素地ができるからだ。
 道場では子供に大きな声であいさつをし、周囲に感謝し、ありがとうございましたと素直に言えるよう指導している。合宿などで一緒に食事をする時も、皆が一緒に「いただきます」をしてから箸をつける。
 人に迷惑をかける言動は、指導者だけでなく、同じ小学生の先輩や60歳代までの大人の道場生が注意をしている。極真空手の理念として「孝を原点として他を益す」を掲げ、道場訓には「長上を敬し粗暴の振る舞いを慎む」とあり、道場を離れてもその実践が求められる。
 そうした環境で、数年後には、無邪気な子供、素行の悪い子供も見違えるほど変わっていく。
 授業参観日にお母さんたちが携帯電話で撮影したり、それに向かって子供たちがVサインを出したりして授業にならないという話を耳にしたことがあるが、集団生活にはそれなりのルールがある。
 しつけは家庭でするべきか、学校でするべきか議論はあるが、基本的には家庭だろう。自由を奪うほどの束縛はいけないが、家庭では、親の言うことを聞くよう最低限しつけるべきではないだろうか。

(空手家、画家・鹿追)
2012年4月28日北海道新聞十勝版(夕刊)


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