防  風  林

(文・高 橋 幸 男)

第6回 原発について
 いろいろな現実を知るにつけ、やはり世の中は甘くないと思うものだ。青年期までは、なかなかそういうことはわからない。
 農家に育ったので、農業も大きく環境を破壊するものだなんて全く思いもしなかった。
 高度成長期は手塚治虫漫画の影響などもあり、科学技術は明るい未来を約束し、あらゆる不可能を可能にするように見えた。
 原発はその代表であり、殺人兵器の原爆に使われた原子力を、平和利用することが人類の英知のように言われてきた。
 テレビなどで原発宣伝をしているのを見ると、腹が立つと同時に、営利目的の一部の人間たちが仕掛けていると思ったし、それに迎合する人々の愚かさを感じたものだ。
 原発に賛成した人たちは何らかの責任を取るべきである。
 学問は人を幸福にするためにあるはずなのに、その機関の最高峰である東大や一流のインテリたちがこぞって原発を称賛し、目先の便利さを追い求めてしまったのは何というひにくだろうか。
 科学技術を自然とは表裏一体であり矛盾を含みまた両立するもので、さまざまな問題は全て人間の心から発していると思う。
 ペットボトル一つにしてもいかに環境(回り回って人に返ってくる)を破壊するかを考え、便利さの裏には破局へのルートもあるのだと知るべきである。人のなかにある物欲はきりがないものだ。
 もう少し我慢をすることを覚え、自然に沿った生き方と創意工夫、精神的豊かさを追求する必要があると思う。
(空手家、画家・鹿追)
2012年7月20日北海道新聞十勝版(夕刊)


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