防  風  林

(文・高 橋 幸 男)

第11回 独学する

世界最高齢の80歳でエベレストに登頂した冒険家三浦雄一郎さんは、「人間には冒険する遺伝子が組み込まれている」と言っていた。

 サルから進化した人が地球上あらゆる場所にすみかを拡大したのは、危険を冒してでも未知の土地へ行ってみたいという冒険心があったからだ、という。

 冒険心を成功させる為にはさまざまな学習や工夫が必要だ。学問やスポーツの分野でも、同じことがいえる。

 私は人から教えを乞う場合もふくめ、自ら進んで独学することことが学問の最高の形であると信じている。好奇心を持って積極的に勉強する姿勢が、それに通じるともう。残念ながらそういう人物をあまり見かけなくなった。 空手の道場に通ってくる生徒たちも、自分から積極的に学ぼうとする人はほとんどいない。 道場では基本的なことはもちろん、組手や稽古の方法まで教えるが、教えてもらう受け身の姿勢と自ら積極的に学ぶのとでは、大きな差があるものだ。 人からお仕着せで教えられたことはいまひとつ興味がわかず、身に付きにくい。実践空手を使おうとするならなおさらだ。

 偉大な仕事を成し遂げた人の多くは独学であり、独学は創造へとつながってゆく。 学校に行き基礎を学んだ人たちも結局は自分で道を切り開いてゆく。未知の分野にマニュアルはないし、基礎的なことを独習しつつ自分の頭で考え、試行錯誤の繰り返しの中から答えを見つけていく。

 好奇心を持ち未知の分野に挑んでいく気持ちを持って勉強する姿勢が、充実した人生を送る上でも大切だと思う。

(空手家、画家・鹿追)
2013年5月31日北海道新聞十勝版(夕刊)


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