防  風  林

(文・高 橋 幸 男)

第12回 困難を味方にする

 日本は地震、台風などの自然災害が多い国だ。 私は若い頃に、少しは人生の役に立つのではないかと考え、たくさんの伝記を読んだ。 そこには華々しい業績とは対照的に、多くの困難と戦った記録がつづられていた。偉大な仕事を成し遂げた人たちに共通する特質は、才能とか幸運に恵まれたというより、逆境を結果的にはプラスに転じていった心の姿勢、強さと言えはしまいか。

 日本人は逆境に強いと言われているようだが、はるか昔から繰り返し襲ってくる天災によって、心の強さがみについてきたのではないかと思う。 空手の道場は心身を鍛え強くすることを目的としている。しかし、最近の傾向としては親が子供を道場の玄関まで車で送り迎えし、稽古の休憩時間などには汗を拭いてやるなど、ちょっと過保護ではないかと思える部分が少なからず目に付く。生物は生ぬるい環境に置かれると退化していってしまう傾向がある。 子供たちに対しても少し困難な部分を与えてやることも必要なのではないか。

 逆境と言える程ではないが、私は子供時代、家が農家だったため小学校までは4キロ、中学校では8キロの道のりを夏は自転車、冬は徒歩で通っていた。 学校から帰ると家の仕事も手伝った。体力の基礎は、明らかにこうした環境につくられたのだ。

 平常寺においても自分自身を律し有事に備える心構えが必要なのだ。困難な事態が訪れてもそれを不運、不幸と捉えるのではなく、自分を強くする試練として受け止めるくらいの心の姿勢が大切だと思う。


(空手家、画家・鹿追)
2013年11月1日北海道新聞十勝版(夕刊)


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