防  風  林

(文・高 橋 幸 男)

第15回 敗北から学ぶ

 「君たちは負けるとわかっている喧嘩に行けるか?」と、極真空手の創始者・故大山倍達総裁は道場生に言ったという。
 人は負けるとわかっている戦い、失敗するとわかっていることには挑戦しないのが普通だろうと思う。誰もが勝利、成功を夢見、敗北、失敗を求めはしない。しかし、人は勝利よりも敗北、失敗から学ぶことの方が多いのではないか。
 トーナメントに出場し何度挑戦しても負けていた選手が、順調に勝ち続けていた選手をやがて追い越し立場が逆転してしまうことがある。いや本当のところは大成した人たちの多くが敗北や失敗といった逆境を多く経験し、辛酸をなめた結果強くなったといえるのではないか。 
 かつて私も上位に入れることを疑わずに出場した大会で、最強の一人に全く歯が立たず惨敗したことがあった。敗北から学んだことは大きく、いかに自分が甘かったかを思い知らされた。
 人は挫折、失敗、敗北を経験することで己の弱さを知り、より謙虚になり必死に努力するようになるのではないだろうか。全日本大会はレベルが高いからと尻込みして出場しない選手もいるが、仮に負けるとわかっていても果敢に挑戦すべきである。 
 現代は軟弱な若者たちが多い。物が溢れ精神的にも肉体的にも過保護になっているからだろう。たとえ環境がそうだとしても、逆境を目指して自らを鍛えていくくらいの積極性がほしいと思う。


(空手家、画家・鹿追)
2014年6月20日北海道新聞十勝版(朝刊)


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