防  風  林

(文・高 橋 幸 男)

第18回 依頼心を捨てる

私たちの子供のころ、小学校の前には二宮金次郎の像があって、先生からも、仕事をしながらでも勉強をするのが尊いと教えられた。

 このような模範的な偉人に比べ「おまえたちはなってない」とばかりに、分厚い本で殴られたこともあった。勉強嫌いの私は少々反抗し、像に登っては蹴飛ばしたり、腰掛け代わりにして遊んだものだった。

 しかし長ずるにつけ勉強していくと、二宮金次郎という人は教師の言っていた印象とはかなり違った、本当に尊敬できる、自己犠牲も厭わない反骨の士だとわかってきた。 極真空手の創始者・故大山倍達総裁は、高度な師匠について学んだこともあるが、多くは寸暇を惜しんで修練を怠らず、実力を身につけたと聞いている。そこにあるのは孤独を恐れず、依頼心を捨てきった自主性そのものだったのではないか。

 私たちは物質的にも恵まれ過ぎて受け身の生活に甘んじ、逆境の中で人に頼らず、努力で道を開くことを忘れてるように思う。もちろん指導者の役割も大切であるが、強い意志を持って自主的に学んでいく過程が大事なのである。

 目標を実現する為にも、自立した一人の人間になる為にも、依頼心を捨て努力で事を成し遂げていく心の強さを身につける必要があると思う。


(空手家、画家・鹿追)
2015年3月10日北海道新聞十勝版(朝刊)


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