防  風  林

(文・高 橋 幸 男)

第22回 競争と協力

 空手は格闘技であり、相手を倒すことを目的とします。護身術としての側面もありますが、究極においては相手の息の根を止めることも念頭において稽古します。

 武術については人それぞれの考えがあり、現代の日本のような平和な時代に空手が人を殺すことを目的にするのは、少々行き過ぎという気がします。

 やるかやられるかと言う格闘技の側面を過敏に捉えると道場が殺伐としてしまいます。競争が行き過ぎると共倒れになり、人類自体が滅んでしまいます。

 かといって、皆で傷をなめ合い仲良くやって行くだけでは墜落してしまい、武術としては失格です。競争か協力か。道場のあり方の難しいところです。

 江戸時代の書物「葉隠(はがくれ)」には「武士道とは死ぬことと見つけたり」

とありますが、厳しさと同時に、武道は人と共に生きる人間社会での共生の道でもあると思います。

 空手の技術を高め、より良く人生を生き抜く為にはライバル同士激しく競い合うことと、チームを組み力を合わせ協力し全体としてより高みに到達することの両方が必要です。

 生き物としての宿命である闘争もしくは競争と、他を益する心をん持って助け合いながら生きる社会的生き方の両立が、現代の武道に求められていると思います。


(空手家、画家・鹿追)
2015年12月25日北海道新聞十勝版(朝刊)


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