審査レポート
旭 川 支 部
原 一 浩 弐段

 まだ審査会の最中のような感覚のまま、北海道に帰って来てしまいました。
 異次元の世界だったのでしょうか?
 否、師範が50人組手を行ったのは事実なのだから現実の世界の出来事でした・・・。

 3月6日20:00発AIR−DO最終便に乗り、東京へ!
 実は、この日は仕事の関係で夕方まで美深町にいました。それを終えて、旭川に戻り、支度をして、今日のところは東京は品川で1泊し、翌日、静岡に向かう事にしました。
 審査を受けるわけではないのに、早々に目が覚めました。きっと、ベッドのせいです。この週は出張が続いて、週の半分はホテルのベッドで寝ていました。品川の立派なホテルはベッドが柔らかすぎて腰に来ます。

 翌朝、9:10品川発のひかりに乗り、一路、静岡へ!
 小一時間で静岡に着きました。
 石川先生がわざわざ駅まで迎えに来てくれました。
 宿泊先を案内して頂き、11時半の出発までロビーで待つ事に・・・そうすると師範が伊藤先生と見えられ、一緒にバナナを探しに行く事になりました。
 なかなか、バナナがなく、グルッと周辺を回って、伊勢丹の地下で買う事が出来ました。

 11:30前に大石道場の柴田自由師範が迎えに来ました!
 一気に緊張が走ります。審査を受けるわけではないのに自分が緊張しています。審査を受ける2人はそうでもないように見えます。
 柴田自由師範の車で北部体育館を目指すのですが、この日は、マラソン大会を市街で行っており、メインストリートを抜ける事が出来ません。車だと10分くらいの所なのですが、相当回りまして、40分くらい掛かったと思います。
 体育館に行きますと、既に道場生であふれていました。柔道場が審査会場になっており、隣の道場では松濤館の審査も行われていました。

 14時から審査開始予定でしたが、13時半過ぎに審査は大石最高師範の「そろそろやりますか!」の一声で始まりました。
 もう自分はドキドキです。(改めて申しますが、自分は審査は受けません)
 受審者が整列し、大石最高師範が一人一人紹介します。
 最初は高橋師範です。
 「空手家であり、画家である。etc」
 全員が紹介され、準備体操から始まりました。
 準備体操の最中でも大石最高師範から「身体が硬い人がいるなぁ〜。硬くても一生懸命やらなくてはダメだ!一生懸命さは伝わるものだ!」と叱咤激励が入ります。
 続いて、基本稽古。
 大石最高師範、自らが号令と動作をしながら20本行うもの、10本のもの、ゆっくりの動作のものを織り交ぜながら行いました。
 その後はすぐに移動稽古が抜粋して行われました。
 小休止が入りました。(ここで伊藤先生は自分の立っていた所の汗をタオルで拭きに行きました。相当の汗です。)
 小休止の後は型です。
 全員で太極1から行います。
 弐段の型が終わると高段者二人のみで五十四歩まで行います。
 見学者の視線が二人に注がれます。
 型が終わりますと、補強です。
 拳立て伏せ・腹筋・スクワット5セットを号令に合わせて行います。
 高橋師範の拳立てはアゴが床に着くのではというような深さです。
 見事、5セットを全員やりきりました。
 大石最高師範は高橋師範の姿を見て、「これが師範だ!誰よりも真剣に行っている。」と絶賛していました。
 小休止の後、いよいよ組手です!
 自分も対戦相手として参加します!
 初めての相手もいるので、普通に緊張します。
 茶帯からスタートです。
 年代別に並び、対戦相手も大体その年代の人を大石最高師範が指名します。自分は30代、40代の方々の時に指名されました。やはりそこそこの道場で戦い方に特徴があるように思えました。
 茶帯が終わり、いよいよ黒帯の登場です。
 時間の関係で初段から師範まで一斉に始まりました。
 自分は最初に指名されました。ウェブマガジンに出ているブラジル2世の中嶋さんでした。
 基本からズッと見ていて、師範にも劣らないくらい一生懸命動いていていましたから、緊張が走りました。案の定、良く動きます。体格差がありましたから、それなりの組手になったと思います。
 その後には伊藤先生や師範とも行いました。
 畳のせいなのか、足が上手く動きません・・・後にただのスタミナの問題だと分かりました。 初段が終わり、弐段の二人と師範の合計3人が残りました。
 終わる度に指名されると思い、行く準備をするのですが、なかなか指名はされません。
 弐段の二人は死力を尽くして戦っています。相当キツイはずです。伊藤先生はスタミナがあります!
 この間、ポツポツと伊藤先生と師範と組手をする事が出来ました。
 いよいよ、師範一人になり、残り20人となりました。
 師範もキツイ顔をしています。
 左手が思うように動かないようです。
 40人を過ぎて、そろそろかと思いましたが、指名はされません。
 45人、相当きつそうです。
 一人終わる毎に石川先生が汗を拭き、水分を補給しますが、息が上がっている状態は続いています。
 47人目!起死回生の後ろ回し蹴り!一本を取りました!ここで大技が決まるなんて!
 この時点で自分は、もしかして?と思っていました。
 そうです。最後の50人目に指名されるのではと感じ始めていました。
 その思いは的中しました!
 「50人目、原さん!」「押忍!」自ずと力が入ります。
 道場中の視線が集まります。
 同じ道場なので手を抜いていると思われたくない、恥ずかしくない組手をしようと思いました。
 突きから下段蹴りを出します。
 珍しく師範が下がります。
 3歩くらい下がったでしょうか?
 師範の姿が消えて、右の側頭部に足が!
 後ろ回し蹴りです。
 師範もろとも倒れました。
 クラッとしましたが、このまま倒れてはいけないと何故か思いました。(石川先生からはこの時点で倒れた方が、格好良かったのでは?と・・・)
 残り時間も少ないので突きで攻めました。
 ドン!太鼓が鳴りました。
 拍手が鳴りやみません!
 大石道場の方々が出て来て、師範を胴上げしました!
 師範のやり遂げたという顔を見て、自分も感動しました。
 道場内が暖かい雰囲気で包まれたような感じでした。

 大石道場の層の厚さが凄いです。
 40代、50代の方々が強いです。
 黒帯を締めてもあぐらをかかずに実践しているのです。
 それでも大石最高師範はやっと武道の道場になって来た。まだまだ幼稚園なみだと仰っていました。
 世界はまだまだ広いです。

 懇親会でも大石道場の方々にはお世話になりました。楽しい会話でアッという間に時間が過ぎて行きました。

 翌朝、興奮冷めやらぬ中、夢心地でホテルを出ると、目と鼻の先に八百屋さんがあって、バナナが置いてありました。灯台もと暗しと申します。

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