「ドーン」30人目を告げる太鼓の音が響き渡る。
「やり遂げたんだ!」体中に熱いものがこみ上げてくるのを感じた。
思い起こせば“挑戦“を決意してから2年越しの昇段審査でした。
2年前、釧路、標茶支部、更に道新カルチャースクールと3道場を掛け持ち、週に5回の空手の指導にあたっていた。
その間、標茶から釧路まで毎日45キロを車で通勤していました。
当時は空手の指導が終わり帰宅は10時30分、夕食は11時過ぎで、そのため少々不健康な生活をしていました。
自分の練習は全くできず、昇段審査を受けると決意はしたが、日々の疲労からかモチベーションがなかなか上がらず、そして転勤が決まりこの年の昇段審査は断念しました。
昨年4月に札幌に転勤となり、家の前に念願のサンドバックのスタンドを設置し、今年こそは昇段審査に挑戦することを決意しました。
7月の札幌道場開設までは、帰宅後ひたすらサンドバックとウエイトトレーニングをしていました。
少しずつではありましたが、突きや蹴りのスピードやパワーが増していくのが実感できました。
しかし、7月末に合宿での連続組手途中で肋骨骨折のアクシデント。
悔しさを拭いきれなかったが、前向きに気持ちを変換。
稽古は休まず、出来ることをやり続けました。
昇段の稽古を本格的に再開したのは9月からでした。
“練習の為の稽古ではなく、昇段審査に繋がる稽古”を志しました。
まずは基礎体力の強化を目標に、限られた時間を有効に使うことを心掛け、雪が降ってからは毎朝職場までの2キロを歩いて通勤しました。
歩いている時も型の動きを実施したり、組手の動きをイメージしたり、下半身の締めを意識するために内股をあえて擦り合わせながら歩いたりしました。
普段の稽古は自由に使える施設がみつからず、自宅や自宅前の道路で行いました。
補強については、本番は基本、移動、型審査を終了後、拳立て、腹筋、スクワットを各50回×5セットを行うために疲労度を加味し、各6セット(特にスクワットは100回)を行いました。
続いて、基本20本、型、サンドバック稽古を行い最後にランニングを行いました。
ランニングは連続30人組手を考慮して持久力を付ける為に5キロを30分、目標心拍数150〜160に定めて心拍計を付けて走りました。
雪が降ってからはサンドバックを叩くことが出来なかったために、シャドートレーニングを取り入れました。
1分間で10〜20セットを行いました。
順調に思えた稽古ですが、疲労からか化膿していた歯が痛みだしてきました。
最初は痛み止めを飲んで誤魔化していましたが、11月22日に突然激痛が走り夜間急病センターへ受診しました。
それからは痛み止めや抗生剤を飲んでもなかなか痛みが治まらず、稽古にも集中出来ない日々が続き焦るばかりでした。
年が明けて何とか痛みが落ち着き、毎週道場の稽古では皆さんに協力してもらい40人まで連続組手を行いました。
その中でスタミナ配分などを本番に備えて見直しをしていきました。
ところが、またしても2月11日にサンドバックの稽古中に不覚にも右足の小指を骨折してしまいました。
しかし、練習を辞める気にはなれず、骨折したまま1時間位サンドバックを叩いていました。 やはり蹴りを出すと激痛が走り、動きも思うようにいかず、昇段審査に対し不安が頭をよぎりました。
高橋師範と石川先生に報告し、師範からは「受審するか否かは自分で決めて下さい」とのお言葉。
やる!と決めた以上はやれるところまでやってやろう!それでだめなら仕方がない!こんな事くらいで負けてはいられない!まだ日にちは残されている!と思い直し、なるべく小指に負担がかからないようにテーピングをし、今まで通りの指導、自主トレ、徒歩での通勤も続行しました。
しかし、さすがにランニングは10日程は困難でしたが、その後再開しました。
そして、紆余曲折はありましたが何とか審査当日を迎えることができました。
決してベストな状態ではありませんでしたが、ここまできたら後はやるだけ!と自分自身を鼓舞し、不思議なくらいリラックスして審査会場に立っていた自分がいました。
今思えばそう思えたのは今までやってきたことが自信となり後ろ盾になっていたのかも知れません。
師範から「連続組手は静岡の有段者の猛者達が相手、気持ちを集中して行うように!」とのアドバイスを頂きました。
無理な深追いはせず、間合いを操作しカウンターを狙うことを心掛けました。
そして、いよいよになれば右足でも蹴ろう!と思っていました。
29人目までは絶対に相手の技を効かされないように細心の注意で間合いを操作して戦いました。
最後の相手となり、絶対に下がらない!気持ちでは絶対に負けない!と自分を奮い立たせました。
後からビデオで観るとやはり右の蹴りが少なく、突きからのコンビネーションができていないとの反省点はありました。
それでも、30人目は自分の力をすべて出し切ったのではないか思います。
昇段審査までを振り返るとやはり無理な稽古は続かない!と実感しました。
特に年をとってくると、ある程度は精神力でカバーできても、体力が続かず体が悲鳴を上げてしまいます。
結局、毎日コツコツと継続することの大切さを改めて認識しました。
今回の昇段審査では“妖刀村正”の異名を持つ大石最高師範の前蹴上げや上段回し蹴りを間近で見ることができ、その偉大さを肌で感じることができました。
更に思いもよらず、色紙を書いて頂くことができました。
その色紙には“継続は力なり!努力は無限なり!”と書かれていました。
正に、自分が今回身をもって感じたことが、そこに書かれていたことに驚きと感動がありました。
今、その色紙は家宝として我が家の茶の間に飾られています。
これからもその言葉を励みとして、昇段審査で自分が学んだことを後輩の皆さんに少しでも伝えていけるように空手修行、人生の修行に精進していきたいと思います。
最後にこのたびの昇段審査を受けるに当たり、大石最高師範、高橋師範、お忙しい中ご自宅に伺いわざわざ型の指導をして頂きました石川先生、合宿や日々のメールでアドバイスをして頂きました沼田先生や伊藤先生、共に昇段を目指しお互いを励ましあった原先生、組手の相手をして頂いた静岡支部の有段者の皆様、高橋道場の皆さんに心より感謝致します。
本当にありがとうございました。
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